荒川アンダーザブリッジ

私、よくそんなこと知ってるねえと言ってもらえる機会があるのですが、そういう知識って、幼い時に読んだ漫画から取り入れたものも大分多いんですよね。そもそも、ネット界隈で俗に言う「厨二病」設定も、例えばキリスト教や神話をモチーフにしていれば、そのルーツを知ろうか、という具合に、意欲的に学ぶようになるんです。

そりゃ、漫画から悪影響がある側面も否定しませんけど、そんなの小説だって映画だって同じなのです。大人達は、有益な部分まですべて捨て去るよりも、情報を取捨選択する能力を身に付ける術を模索した方が良いのではないでしょうか。

 

とまあ、そんなことを考えていると、久しぶりに漫画が読みたくなったので、『荒川』を引っ張り出してきたのですが、やっぱり、おもしろいです。

ぶっとんだキャラクターや設定、ギャグとシリアスの絶妙なバランス、表紙や巻末漫画にみられるような色彩感あふれるセンス…

キャラクター達が語る人生観みたいなものが、普遍的なものか、良いこと言ってるのか、そんなことは二の次でよくて、それを受け取った読者が、自分はどうなんだろう、自分はこういう時何を言い何をするだろうと、考えさせてくれるような力がそこにあるのが、大事なんじゃないかと。

フィクションでは、リアリティがあることも1つの魅力になりますが、突拍子もない設定でありつつも現実とのリンクをにおわせることで、架空の世界として笑いつつも、現実だったらどういう違いが生まれて…と、シミュレートさせてくれる、という部分が、最大の魅力ではないかなと思っています。

 

作者の中村光さんは、これらより前に『中村工房』という短編集を出版されているのですが、その頃から独特の笑いやキャラクター設定を持っていて、大ファンでした。

『荒川』では、その短編の中でのキャラクターを元にキャラクターが作られていて、知らなくても楽しめるけど、知っているともっと楽しめる、という感じです。

絵柄が今よりも安定してないですが、『荒川』がお好きな方なら、一度お読みすることをお勧めします。

 

余談ですが、幼少期のニノと対峙しているのも、リクの父・積を負かしたのも、シスターが去った後の孤児院の院長をしていたのも、全部河童ですよね。
河童が、リクのおじいちゃんだったりしたらおもしろいな、と思っていましたが、それだと少し若すぎるかな?とか、いろいろ矛盾があって、うーん、…おどらされてます笑

14巻楽しみだな~。